1. 「食べる」ことは「訓練」の連続
こんにちは。第2回は「食べる機能」の発達についてお話しします。
赤ちゃんは固形物を噛んで飲み込む機能は、生まれつき備わっているわけではありません。
離乳食という期間を通じて、段階的に学習し、獲得していくものです。 「離乳食」は単なる栄養補給ではなく、お口の機能を育てるための大切な「トレーニング期間」なのです。

2. 食べるための準備期間(胎児期~新生児期)
実は、お母さんのお腹の中にいる時から準備は始まっています。
妊娠7週頃から皮膚の感覚が発達し、妊娠32週頃には羊水を飲み込む「嚥下」や、指を吸う「吸啜(きゅうてつ)」の練習をしています。
生まれたばかりの赤ちゃんの口は、まだ歯が生えておらず、舌と上顎で乳首を挟み込んでミルクを飲むのに適した形をしています。この時期にしっかりとおっぱいを吸うことで、口周りの筋肉や舌の使い方の基礎が養われます。

3. 離乳食のステップ:お口の動きに合わせる
離乳食の進め方で大切なのは「月齢」だけで判断せず、「お口の機能(動き)」や「歯の生え方」に合わせて食形態(固さや大きさ)を調整することです。早すぎても遅すぎても、正しい機能は育ちません。
①離乳初期(5~6ヶ月頃):口唇食べ期(ゴックン期)
お口の状態: まだ歯は生えていません。
動き: 舌は前後にしか動きません。唇を閉じて食べ物を取り込み、舌で奥へと送り込みます。
食事: ヨーグルト状のペースト(ポタージュ状)。
ポイント: スプーンを口の奥まで入れすぎないこと。下唇にスプーンを乗せ、上唇が下りてきて食べ物を捉えるのを待ちます。「唇を閉じて飲み込む」ことを覚える大切な時期です。

②離乳中期(7~8ヶ月頃):舌食べ期(モグモグ期)
お口の状態: 下の前歯が生え始める頃です。
動き: 舌が上下に動くようになります。食べ物を舌と上顎(口蓋)で押し潰して食べます。
食事: 舌で潰せる「お豆腐」くらいの固さ。
ポイント: 平らなスプーンを使い、舌の上下運動を促します。

③離乳後期(9~11ヶ月頃):歯茎食べ期(カミカミ期)
お口の状態: 上下の前歯が生えてきます。
動き: 舌が左右に動くようになります。食べ物を舌で左右の奥歯(歯茎)へと運び、すり潰す練習を始めます。
食事: 歯茎で潰せる「バナナ」くらいの固さ。
ポイント: 噛むリズムが生まれてきます。手づかみ食べを積極的にさせましょう。

④離乳完了期(12ヶ月~):歯食べ期(パクパク期)
お口の状態: 奥歯(第一乳臼歯)が生え始めます。
動き: 歯を使って噛み砕き、すり潰す「臼磨運動」が始まります。
食事: 歯茎で噛める「肉団子」くらいの固さ。
ポイント: 前歯で噛み切る練習(かじり取り)を行い、一口量を覚えます。

4. 「手づかみ食べ」の重要性
「汚れるから」と敬遠されがちな手づかみ食べですが、これは「目と手と口の協調運動」であり、摂食機能の発達において非常に重要な役割を担います。
目で食べ物の位置や大きさを確認し、手で掴んで固さや温度を感じ、口まで運んで入れる。この一連の動作を通じて、子供は「どけくらい口に入れたらいいか(一口量)」を学習します。
手づかみ食べを十分に経験していないと、詰め込みすぎたり、丸飲みして窒息の原因になったりすることがあります。

5. 現代の食生活の課題
近年、パンや麺類、ハンバーグなど、柔らかい食べ物を好む傾向が強まっています。
調査によると全体の約47%が「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」と回答しています。
柔らかいものばかり食べていると、噛む力(咀嚼力)が育たず、顎の発達不足を招きます。その結果、歯が並ぶスペースが足りなくなり、歯並びが悪くなる(叢生)原因となります。
当院では、管理栄養士と連携し、お子様の発達段階に合わせた適切な「噛む食事」の指導も行っています。焦らず、お子様のペースに合わせて「食べる力」を育てていきましょう。

監修:田中 秀直
経歴:
2001年3月 朝日大学歯学部 卒業
2001年4月 第94回歯科医師国家試験合格/歯科医師免許取得
2001年4月 大阪歯科大学大学院 歯学研究科(口腔衛生学専攻)
2001年4月 大阪歯科大学附属病院 予防歯科 勤務
2005年3月 大阪歯科大学大学院修了/歯学博士取得
2006年 西宮 白石デンタルクリニック・脇歯科医院 勤務
2007年 田中歯科医院 勤務
2012年 ハーバード大学(USA) エステティック&インプラント卒後研修プログラム修了
2012年 ペンシルバニア大学(USA) エステティック&インプラント卒後研修プログラム修了
2014年 医療法人 田中歯科医院 設立
職歴:
大阪府歯科医師会附属歯科衛生士専門学校 非常勤講師(2009年~)
大阪歯科衛生士専門学校 非常勤講師(~2004年)
国際東洋医療柔整学院 非常勤講師(~2004年)
国際東洋医療鍼灸学院 非常勤講師(~2004年)
太成学院大学歯科衛生専門学校 非常勤講師(~2008年)
行岡保健衛生学園歯科衛生科 非常勤講師(~2009年)
ビクトリアキッズイングリッシュアカデミー 園医(2014年~2015年)
保育ママスキップの委任状 園医(2015年~)
歯科外来診療環境体制加算の施設基準に係る研修(2015年~)
エンジェルキッズ 園医
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